ごもブロ

都内でWEBディレクター/PMをやってるごもくのブログ。読んだ本から買ったモノ、日常のできごとを自由に書きますよ。ちなみにMBA保持者!

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AirBnBの全てがわかる「AirBnB Story」は起業家の最良の教科書

こんにちは、ごもくです。

最近骨太の起業やベンチャーに関する本がないなーと思っていたら、日経BPからとても興味深い本が発売されました!

その名も「AirBnB Story」。日本では馴染みがあまりありませんが、インターネットの力を使って「民泊」事業を大きくグロースさせた起業のルポルタージュです。

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本日はこの本の内容を紹介しながら、スタートアップに必要なことって?を考察したいと思います。

 

AirBnBって?

本ブログを読まれている方の中には、そもそもAirBnBを初めて知ったという方もいらっしゃるかもしれません。そこで簡単にAirBnBについて解説します。

AirBnB(エアー・ビーアンドビー)はアメリカでスタートアップしたベンチャー企業です。著名なアクセラレーター(起業を応援する企業)であるY combinatorの卒業生であり、共同創業者は美大出身者2名、エンジニア1名という他に類を見ないほど特殊な経歴をもつ企業です。

そうしたAirBnBは民泊を主の事業としている企業です。企業名と同名のアプリがリリースされています。そこでは、家やマンション、またはそれに近い状態の空きスペースを貸したい人と、それを借りたい人をつなげるためのプラットフォームです。

全世界で190を超える国で利用されていると言われており、企業評価額は1000億円を超えるユニコーン企業です。

本書の概要

さて、そうしたAirBnBの企業から現在までのストーリーをルポルタージュ風に迫ったのが本書「AirBnB Story」です。2016年に原著が発売された同書は日本版アマゾンでの要所ストアでも30近いレビューを集め、そのどれもが高評価となっています。

私も早速翻訳版を読んで見ましたが、歴史の浅い企業だけあって「現在進行形だな」というのが第1印象です。まずは目次を見てみましょう。

  • 1章 大ばくち
  • 2章 会社をつくり上げる
  • 3章 エアビーアンドビー共和国
  • 4章 わるいヤツら
  • 5章 アンチとの闘い
  • 6章 ホテル業界を破壊する
  • 7章 リーダーになる
  • 8章 3人が次に出すものは?

やや抽象的な章立てですが、第1章と第2章が企業から現在のAirbnbになるまで、第3章以降は現在のAirbnbコミュニティと競合・政治的な闘争になっています。

Airbnbは既存の業界であるホテル業界と、それを取り巻く政府・官公庁をとりまくロビイング活動が顕著です。 

それらは本書でも触れられており、以下のような記述があります。 

エアビーアンドビーと激しい争いを繰り広げている大都市には、ひとつの共通点があるとルヘインは言う。それは、その地ならでは政治環境だ。(No.2682)

つまり、既存のホテル業界が政治家に対してロビー活動を行なっており、特にAirbnbの重点顧客であるニューヨークなどの大都市圏での政争に勝つかどうかが、現在のAirbnbを巡るトピックの一つなのです。

日本にAirbnbが参入できない理由の一つとして旅館・ホテル業が免許制であることがあげられています。また、Airbnbは最近現地での体験アクティビティに力を入れていますが、日本ではこれもまた免許制となっており、きちんとしたガイドを行おうとするとそれ相応の教育を受けた人でないといけません。

ただ、そういったAirBnBを取り巻く状況の紹介は、AirBnBから学ぶほんの些細なことかもしれません。既存サービスやプロダクトを破壊しようとする場合には必ず既存業界とそのステークホルダーから反発があるのは当然ですし、本当に肝心なところは、そういった反発があってもAirbnbが受け入れられ、グロースしている背景にあるのではないでしょうか。

私はAirBnBのグロースストーリーに、マーケットプレイス型のスタートアップの本質があるのではないかと考えます。

AirBnBのグロースストーリー

さて、それはどういうことなのでしょうか。本書から読み取れる視点として、プロダクトとビジネス面2点で説明しましょう。

まずはプロダクトからです。

しかし、チェスキーとゲビアには、ウェブサイトとユーザーエクスペリエンスに関して、初めから特にこだわっていることがいくつかあった。  なめらかに動くこと。  簡単に使えること。  掲載物件が美しく見えること。  必ず3クリック以内で予約が完了すること。(No.1103) 

上記の引用は、著者がなぜAirBnBが成功したのか?ということを説明したものです。いわゆるユーザーエクスピリエンス(=ユーザーの体験を重視する考え方。UXと言われます)を重視した考え方ですね。

さらにここからはプロダクトに関する2点の洞察が得られます。

ひとつめは、デザイン思考です。共同創業者3名のうち2名は美大出身でアプリ内のどんな箇所でもユーザーの体験や、美しい物件といったデザイン面に力を入れたという説明です。昨今ではバルミューダーのようにデザイン思考を自社のコアコンピタンスとしている企業もありますが、デザイン思考といった言葉があまり出てきていない中でこのような視点があるというのが先見的という指摘です。

一方で、3クリック以内に予約が完了するという点は、いわゆるコンバージョンを上げていくというベタな作業になります。ただ、3クリック以内ということが非常に重要であると著者は指摘しています。

3クリック以内というのは、スティーブ・ジョブズが初代iPodを作った際に、ユーザーがスタートの画面から目的の曲にたどり着くまでに3クリック以内におさめることを定めたことから由来しています。

つまり、AirBnBのプロダクトの強みは、優れたデザインによる豊かなユーザーエクスピリエンス、そして予約が早期に成立仕組みにあると言えます。

ただ、これらについて言えばスタートアップ界隈の常識であり、どんなプロダクトやサービスであっても求められることです。

そんな中でAirBnBはプロダクトだけではない、ビジネス面での強さを発揮します。

それが次の引用です。 

チェスキーとゲビアはすぐに2つの弱点を発見した。ひとつは宿泊料をどのくらいにしたらいいかわからない人が多かったこと。もうひとつは写真だ。(No.826)

上記はAirBnBを成長させるために何が必要なのかを創業者が考えた際に得られた2つの視点です。前者の詳細については本書内で書かれていませんが、後者の写真については多くのことが記述されています。

例えば、創業者自身がホスト(AirBnBで宿泊場所を貸すユーザーのこと)を自宅を訪ねて部屋の写真を撮影したり、そこでインタビューをして機能の改善を行ったことです。

これもリーンスタートアップと呼ばれるような、顧客へのインタビューを多数行い、その都度自社のプロダクトを作り変えていくという方法論に当てはまります。

しかし、本当に顧客の意見を丹念に聞き、PDCAを高速で回すことが成功につながったのでしょうか?

本書を読むと、AirBnBはホストへの取材やユーザーインタビューは繰り返し行っているものの、ゲスト(宿泊場所を借りる)人に対するユーザーインタビューが行われていないことに気づきます。本書を読む限りでは、ホスト>ゲストの順で優先順位をつけられているようにも感じます。

AirBnBのようなマーケットプレイスサービスは需要と供給のバランスがものすごく大切です。供給過多(ホストばかり)であっても、需要過多(ゲストばかり)出会っても、サービスは成長しません。どちらもある一定数おり、それらが活発に取引していることで、自社の収益につながることなります。

そこで取れる選択肢は2つ。ゲスト側に注力してサービスを展開するか、ホスト側に注力して展開するのか、です。矛盾しているように感じるかもしれませんが、資金の少ないベンチャーでは複数のことを同時進行するわけには行かず、どちらかを戦略的に選ばなければならないことが多々あります。「鶏が先か卵が先か」の議論で、先に卵のか鶏があるのかを決めなければならないのです。

そしてAirBnBはホスト側に注力しました。そもそもが、ホテルが予約できないイベント期間や大都市圏を中心に展開したサービスだけあって、需要過多になる状況を避けたいためであったのだと思います。

この視点はとても重要です。なぜなら、それを間違えることで成長するかどうかの成否がかかっているといっても過言ではないからです。

この考え方を他のビジネスに転用してみたらどうでしょうか。例えばメルカリやヤフーオークションといったマーケットプレイスです。

どちらもものの売買を見える化するサービスですが、このようなサービスでは取引では、売り手が先か、買い手が先なのかということが当てはまります。

買い手ばかりだと、それらのユーザーは見える化されないため、マーケットプレイスが活性化しているように見えません。しかし、売り手側が多い場合にはどうでしょうか。

売り手側は商品を出品することで、画面上にそれらの商品が表示され、見える化されます。マーケットプレイスが活性化しているように見えるのです。物を売っている場所には必然的に多く人が集ります。

それは都市にしろ、蚤の市や、実際のフリーマーケットもそうです。つまり、まず先に売り手がなければ成立しないのがメルカリやヤフオクといったビジネスモデルなのです。

AirBnBはそれを上手く見極め、そこに資源を注力することで大成功したといっても過言ではないと、本書から読み取れます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

本書を読むと、AirBnBは今流行りのスタートアップ、デザイン思考の方法論を体現していきながら、様々な 政治的な闘争にも巻き込まれながらも爆発的に成長していることに気づきます。

なおかつ、マーケットプレイス型のサービスをどうやって成長させるかという洞察も含まれており、ありがちな「鶏が先か、卵が先か」の議論の解決にも繋がるような内容でした。

こうしたマーケットプレイス型のサービスや企画を立ち上げようとしている方から起業家の方まで、色々な方にお勧めできる1冊です!